Oasisお勧めCD(第11回)

音楽にこだわりのある、OasisならではのCD紹介コーナーです。

年末、例によってオアシスのカウンターで飲んでいると、鈴木氏から
「2002年の最初は誰書くの?」と言ってきたので、
「何かリクエストはある?」と聞き返したら
「じゃキャロル・キングあたりで?」。
過去に何度かリクエストされていたのだが、又言われてしまった。
(かなり彼女の「つづれおり」がお気に入りらしい。)
店のBGMが、大好きなプロコル・ハルムの「蒼い影」に変わった。

それでは少しひねって、彼女繋がりでダ二−・クーチマーにしようと言う事になった。

第8回で書いたボズ・スキャッグスの新作では、プロデューサーとしてクレジットされている
ダ二ーだが、やはり彼は名セッションマンとしてのイメージが強い。
中でも個人的に気に入っているものの一つに、ジャクソン・ブラウンの「孤独のランナー」がある。
そんな事を思い出しながら、今、家でこの原稿を書き始めている。
口約束なんて他愛もないもので、ダ二−のソロ・デビュー作「クーチ」を聴いていたのを止め、
「孤独のランナー」にかけ直し、新年一発目もジャクソン・ブラウンへと変更してしまうのであった。

  
70年代のジャクソン・ブラウンに駄作は無い、と思う。
彼も西海岸で流行った、シンガー・ソング・ライター系のミュージシャンであることに間違い
ないのだが、デビュー前はニューヨークでアンディ・ウォーホールが作った
ベルベット・アンダーグラウンドの連中とつるんでいた時期もあった。
ニコのバックなんてイメージじゃないけどね。

デビュー作で「ドクター・マイ・アイズ」がヒット。ちょっと遅れてイーグルスが、ジャクソンと
グレン・フライの共作「テイク・イット・イージー」をヒットさせた事も、彼への追い風に
当然なった。
2作目の「フォー・エブリマン」では、60年代のヒッピー達と別れを告げ、新しい(70年代の)
方向性を模索することになる。
そしてカリフォルニア・ロックの金字塔的なアルバム「レイト・フォー・ザ・スカイ」(74年)を発表。
日本でも浜田省吾のようなフォロワ−を輩出させることになる。
ちなみにオアシスにも随分前から、リクエストされているのは聞いた事もないが、ひっそりと
このアルバムはディスプレイされている。
この作品、タイトルナンバーで始まり、身近な自叙伝的恋愛話しから、ラストナンバーの
「ビフォー・ザ・デリュ−ジ」では世紀末的な詩まで唄っている。
しかし彼の場合、題材は大袈裟になっていても普通の若者としての、目線の位置は低い。
なにか文学小説を読んだ後の太宰治の私小説でも読むように、時に誰にも言えないような
気恥ずかしさの共感を覚えたりもする。
60年代のディランが直接的なメッセージを発していたのに対して、ジャクソン・ブラウンは割と
比喩的で暗示的だ。
ここから先はそれぞれの解釈だ、とボールをこちら側に投げ返されてしまうようで。
この3作目の中に「ザ・レイト・ショウ」という曲がある。

    君は誰も住んでいない家の窓辺にいて
    僕はその向かいの古い型のシボレーに乗っている
    明日、ごみ収集の人が来たとき
    歩道にそれ(過去)を置いて
    僕達2人、出発しよう

エンディングの最後には、シボレーのエンジン音が鳴り響いて曲が終わっていく。
旅立った先にはポジティブな未来があるのか、ネガティブな現実が待ち構えているのか…。
ちなみにジャケット写真は、そんな家とシボレーが写っている。
(撮影者はイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」と同じ人)

その後も、彼は好アルバムを出し続ける。妻の自殺というショッキングな出来事のなか
発売された「プリテンダー」。
収録曲も「あふれ出る涙」「我が子よ」「暗涙」等と読んでいるだけで気分はマイナスモードに
陥ってしまう。
タイトル曲「プリテンダー」では

    自分を偽って生きる人の為に祈ってください
    哀れな人を救う為に そこにいるのですか
    ふりをしている人を助けてください
    この僕の為に そこにいるのですか
    偽って生きている僕を救ってくれますか

なんか、玉川上水に入水しそうな気になってしまう。
恥の多い人生を送ってきました、と告白する続編を残して。
しかし、彼は自殺しなかった。
そして冒頭の「孤独のランナー」に続き、80年「ホールド・アウト」の全米ナンバーワン・ヒットで
彼の音楽的キャリアはピークを向かえる。
割と親日家でよく来日もする。
(「フォー・アメリカ」という曲がヒットしている時に観に行ったが、不覚にもプリテンダーで
感動してしまった)
 
 

新年早々、重い感じで終わってしまうのも気が引けるので、約束事でもあるし簡単に
ダニー・クーチマーがらみにも少し触れておく。
彼のキャリアで特筆しとくのは2点(ファンの人がいたらすみません)。
一つはザ・シティというバンドでキャロル・キングと一緒にやっていた点。
彼女と「つづれおり」のプロローグ的な、素敵なアルバム「夢物語」(68年)を作成している。
そしてもう一つ、ダ二ー主導のジョー・ママというバンドで2枚のアルバムを作っていること。
実は、オアシスにもデビュー作を置いてはあるが、いかんせん少し素人くささがあるようで、
2作目「J・イズ・フォー・ジャンプ」(71年)のほうが圧倒的に好きである。
今やアメリカン・ロック界のゴッド・ファーザー的プロデューサー、トム・ダウトが乗りの良い
グルーブ感を出している。
鈴木さん買っといてね。

書き終わって、何故か昼に観た「ミリオンダラー・ホテル」で印象的に導入されていたU2の曲を
思い出している。
映画の中で、ジョン・レノンがトリップしていた時期の「俺はセイウチだ」と叫んでいる曲も
カバーされている。

2002年になってしまった。
それでも、ロックはすばらしい。

ライアー宮崎


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